歯科治療において、虫歯や歯の損傷が進行した場合、被せ物(クラウン)によって機能や見た目を回復させることが一般的です。被せ物には、自費診療と保険診療の両方で提供される選択肢がありますが、今回は保険診療で選べる被せ物に焦点を当て、各材質の特徴や賢い選び方について詳しく解説していきます。
保険診療での被せ物は、経済的な負担を軽減しながらも、機能性や一定の審美性を確保できるよう設計されています。しかし、材質によって耐久性や見た目、適用できる部位に違いがあるため、選択の際にはいくつかのポイントを考慮する必要があります。本記事では、保険診療で選べる被せ物の歴史や種類、さらにそれらを長持ちさせるためのケア方法を詳しくご紹介します。
保険診療で提供される被せ物を上手に選ぶための情報を知り、自分に最適な治療法を見つけましょう!
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この記事でわかること
- 保険診療の被せ物の歴史
- 保険診療で選べる被せ物の種類と材質
- 被せ物を長持ちさせるためのポイント
- 保険診療の被せ物を選ぶ際のポイント
- まとめ
保険診療の被せ物の歴史
保険診療における被せ物の始まり
被せ物、つまり補綴治療は、失った歯の機能と見た目を取り戻すために古くから行われてきました。特に保険診療でカバーされる被せ物は、戦後の医療保険制度が確立されることで広く普及しました。日本では1961年に国民皆保険制度が導入され、誰もが手軽に医療サービスを受けられる環境が整いました。これにより、歯科治療においても保険診療の範囲内で質の高い被せ物を受けられるようになり、口腔内の機能を維持するための治療が身近なものとなりました。
保険診療と自費診療の違いが明確になった時代背景
保険診療は、必要最低限の機能を保証することを目的とし、経済的な負担を軽減するために標準的な治療法が提供されます。しかし、審美性や長期的な耐久性を重視する治療に関しては自費診療が選ばれることが多く、保険診療と自費診療の差は、時代とともにより明確になっていきました。1970年代以降、保険診療では主に金属を使った被せ物が主流となり、強度とコストパフォーマンスに優れた治療が求められてきました。
保険診療における被せ物の材質は、時代の変遷とともに進化してきました。初期の頃は主に金属製の被せ物が使われていましたが、技術の進歩により新しい素材が次々と登場し、現在ではより多くの選択肢が提供されています。
メタルクラウンからレジンやCAD/CAMへ
1960年代から1990年代にかけては、保険診療の被せ物として金属クラウンが主流でした。これらは銀色の見た目から「銀歯」とも呼ばれ、耐久性が高く、奥歯に適していました。しかし、見た目に対する患者さんの関心が高まるにつれ、審美的な要素も重要視されるようになり、1990年代以降、前歯など見える部分にはレジン前装冠が使用されるようになりました。さらに、近年ではCAD/CAM技術を活用したセラミック製のクラウンが登場し、保険診療でもより審美的な治療が可能になっています。
保険診療で選べる被せ物の種類と材質
メタルクラウン(銀歯)
メタルクラウンは、保険診療で最も一般的に使われる被せ物の一つです。銀歯として知られるこのクラウンは、金属の強度と耐久性が特徴で、特に奥歯に適しています。金属クラウンは、咬合力(噛む力)に強く、食べ物をしっかりと噛むための重要な役割を果たします。ただし、銀色の見た目が審美性に欠けるため、前歯にはあまり使われません。
メタルクラウンの強みと限界
メタルクラウンの最大の強みは、その耐久性です。特に、咬合圧の強い奥歯や臼歯部に最適です。また、加工が比較的容易であり、治療期間も短縮できるというメリットがあります。しかし、見た目が自然歯と異なることから、審美的な側面でデメリットがあります。また、金属アレルギーのリスクも考慮する必要があり、患者さんによっては他の材質を選ぶことが推奨されます。
レジン前装冠
レジン前装冠は、金属フレームにレジン(樹脂)を被せて、自然な歯の外観を再現するタイプの被せ物です。前歯など、見た目が重要な部分でよく使用されます。このクラウンは、見た目が比較的自然で、審美性を求める患者さんに適しています。
レジン前装冠の美しさと使用上の注意点
レジン前装冠は自然な見た目を提供しますが、レジンは長期間使用すると変色や摩耗が起こる可能性があります。そのため、長持ちさせるためには、日常的なケアや定期的なメンテナンスが必要です。また、奥歯のように強い咬合力がかかる部分では、金属部分が露出することもあるため、適切な部位に使用することが大切です。
CAD/CAM冠
CAD/CAM冠は、コンピュータ支援で設計・製造されるセラミック製の被せ物です。保険診療でも近年適用されるようになり、金属アレルギーのリスクがない点が大きな魅力です。また、見た目も自然で、審美性が求められる患者さんにも対応可能です。
また、2024年6月の保険改定により、今までは一部適用条件がありましたが、全ての大臼歯で使用できるようになりました。
しかし、第二大臼歯と言われる奥歯(前から数えて7番目)については、CAD/CAM冠の中でもPEEK冠といわれる新しいものになります。新しいが故に2024年10月1日現在では色味が一色(アイボリー)しかなく、審美性を重視する場合は注意が必要です。PEEK冠に関しては他の色味がでることを待つしかありません。
金属アレルギー患者さんへの対応とコストパフォーマンス
CAD/CAM冠は、金属を使わないため、金属アレルギーの心配がありません。また、保険適用内で受けられるため、コストパフォーマンスにも優れています。特に、奥歯に対しても適用できることから、強度と美しさを両立させた治療が可能です。
被せ物を長持ちさせるためのポイント
適切なメンテナンスの重要性
被せ物を装着した後、その寿命をできるだけ延ばすためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。被せ物自体は耐久性があるように設計されていますが、口腔内の環境によっては、歯垢や歯石の蓄積、噛み合わせの問題、または歯ぎしりなどによって劣化が早まる可能性があります。適切なメンテナンスは、これらの問題を未然に防ぎ、被せ物の寿命を延ばすための最善の方法です。
定期検診とクリーニングの役割
被せ物を装着している場合でも、定期的な歯科検診が必要です。少なくとも半年に一度は歯科医院を訪れ、被せ物の状態を確認し、歯科医師や衛生士によるクリーニングを受けることが推奨されます。特に被せ物の周りに歯垢がたまりやすく、それが原因で歯肉炎や歯周病が進行することがあります。これを防ぐためには、定期的なプロフェッショナルケアが重要です。
日常生活で気をつけるべきこと
日常生活でのケアも、被せ物の寿命を大きく左右します。被せ物を装着した部分は天然歯と同じように見えますが、材質や構造が異なるため、特別な注意が必要です。適切なブラッシング、フロスの使用、そして食生活の見直しが、被せ物を長持ちさせるための基本です。
硬い食べ物や歯ぎしりの影響
硬い食べ物(氷、ナッツ、キャンディなど)を頻繁に噛むと、被せ物に負担がかかり、ヒビ割れや欠けが生じる可能性があります。特にセラミックやレジンの被せ物は、硬い力に弱い傾向があります。また、寝ている間の無意識の歯ぎしり(ブラキシズム)は、被せ物に過剰な負担をかけ、早期に摩耗させる原因となることがあります。歯ぎしりが心配な場合、ナイトガード(マウスピース)を使用することで、歯や被せ物を保護することができます。
適切なブラッシングと歯間ケア
被せ物を長持ちさせるためには、毎日のホームケアが不可欠です。被せ物がある場合、特にその周囲に歯垢がたまりやすいので、正しいブラッシング方法を身につけることが重要です。柔らかい歯ブラシを使い、被せ物と歯肉の境目をしっかりとケアすることが推奨されます。
歯間ブラシやフロスの使用
歯間部に汚れが溜まると、被せ物の劣化だけでなく、天然歯や歯肉にも悪影響を及ぼします。特に、被せ物と隣接する歯の間に食べ物が詰まることが多いため、フロスや歯間ブラシを使って、日常的に汚れを取り除くことが重要です。被せ物の寿命を保つためには、これらの追加ケアが欠かせません。
保険診療の被せ物を選ぶ際のポイント
自身の生活習慣に合わせた選択
保険診療の被せ物を選ぶ際は、患者さんの生活スタイルや口腔内の状態を考慮することが大切です。被せ物はそれぞれ材質が異なり、強度や審美性、費用に違いがあります。日常生活での使用頻度や、咬合力のかかり具合、審美的な要求によって、最適な被せ物の選択肢が変わります。特に前歯や奥歯では求められる条件が異なるため、歯科医と相談しながら選ぶことが重要です。
審美性を重視する場合の選び方
前歯など目立つ部分に被せ物を装着する場合、見た目が自然であることを重視する方が多いです。保険診療の範囲内では、レジン前装冠やCAD/CAM冠が審美性に優れた選択肢です。レジン前装冠は比較的自然な外観を持ち、笑った時に銀歯が見えることを避けられます。また、CAD/CAM冠は金属を使用せず、セラミック素材で白い歯に近い見た目を再現できるため、審美性を重視する場合には特に適しています。
コストと耐久性を考慮した選択
被せ物を選ぶ際には、治療費や耐久性も大切な要素です。保険診療内で提供される被せ物はコストパフォーマンスが高く、多くの患者さんにとって手頃な選択肢となります。金属クラウンは耐久性が非常に高く、長期的に安定した治療が可能です。一方で、レジン前装冠やCAD/CAM冠は美観を重視する一方で、摩耗や割れに対する耐久性がやや低い場合があるため、強い咬合力がかかる奥歯に装着する際には注意が必要です。
長期的な視点での選択の重要性
短期的な治療費だけでなく、長期的な視点でメンテナンス費用や被せ物の耐久性を考慮することも重要です。例えば、金属クラウンは耐久性が高いものの、見た目が気になる場合、将来的に審美性を重視した自費診療の被せ物に置き換えることを検討する患者さんもいます。また、レジン前装冠やCAD/CAM冠は、将来的に交換が必要になる可能性もありますが、その際の費用やメンテナンスについてもあらかじめ理解しておくことが大切です。
まとめ
保険診療で提供される被せ物は、経済的負担を抑えつつ、しっかりと機能性を確保できる重要な治療法です。
メタルクラウンやレジン前装冠、CAD/CAM冠など、選べる材質にはそれぞれ強みと弱みがあり、患者さんの生活スタイルや治療の目的に応じた選択が求められます。特に、
咬む力が強くかかる奥歯や、見た目が重視される前歯など、治療する歯によって適した被せ物が異なるため、歯科医師との十分な相談が不可欠です。
また、被せ物を長持ちさせるためには、日常的な口腔ケアや定期的なメンテナンスが非常に重要です。
適切なブラッシングやフロスの使用、歯ぎしり防止のためのナイトガードの活用など、セルフケアを徹底することで、被せ物の寿命を延ばすことができます。
最終的には、患者さんのニーズや予算、口腔内の状態に合わせて最適な被せ物を選ぶことが、長く快適に歯の健康を保つためのカギとなります。どの材質が適しているか迷った場合は、ぜひ歯科医師に相談し、自分に合った最善の治療法を選んでください。
わかば総合歯科 市川について
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当院は、保険診療から自費診療まで総合的な診療を行っております。在籍歯科医師は歯科の中でも権威のある「藤本研修会」やその他多くの勉強会に参加しており、『インプラント』『補綴咬合』『歯内療法』『歯周病』を常に研鑽しております。
インプラントについては
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